百物語

┣8本目 嘘の声

じゃあ、今度は俺が。

俺のは怖くないけど、不思議な話。

俺は昔、田舎に住んでて…回りが自然って感じの場所だった。

そして、俺の友達の家が神社だったからよく遊びに行ってた。

ある日、俺と友達何人かでその神社でかくれんぼしてて、俺は神木の間の穴に隠れてたんだけど春になったばっかだったのもあって眠くなって、そのまま寝ちまったんだ。

で、次に目が覚めると同じ神社なんだけど辺りの風景が変わってて…なんて言うか昔にタイムスリップしたみたいな感じの場所にいたんだ。

俺が外に出ると2人の男が話してて、暫くぼーっとしてたら俺に気付いて

「目、鼻、耳。どれがいい?」

って聞くから俺は

「耳」

って答えたら耳を引っ張られて何か入れられてさ。

スゲー痛かった。

で、また意識が途絶えて気が付いたら友達におこされてたんだよな。

…それからさ。

俺の耳に人の“本心”が聞こえるようになったのは。
始めはなんだか、分からなかったけど、サッカーとかで誰かがボール取られたりして「ゴメン」って謝るとリーダーっぽいのが「あぁ、大丈夫」とか口では言ってても俺の耳には「ふざけんなよ」って…なんだろ、少しエコーのかかった声で聞こえてくるってわけ。

心が聞こえるわけではなくて、嘘ついた時だけ聞こえるんだよな。

スゲー人間不信に陥りそーだったけど…でも、俺はそのお陰で嘘の種類が分かったんだ。

良い嘘と悪い嘘。

本当にあるんだなって思った。

俺はサッカー部だったんだけど、俺のミスでいつもつるんでた友達に怪我させちまって…

そいつはレギュラー確定ってくらいサッカー好きだし上手かったのによ。

俺は「ゴメン」って謝りながらも「どうせ罵るんだろ」って思ってた

「だ、大丈夫だって、こんくらい」という、そいつの言葉の他にエコーががった声が聞こえた。

「あぁ、やっぱりか」って思った瞬間…そいつは「痛いけど…今、責任を感じてるのはこいつだ。バレねぇようにしないと」って声がしてきた。

俺は驚いたのと同時に人を信じられるようになった。
時々、良いなって言われるけど…知らぬが仏ってのもあると思うぜ。

…って、怖くもなんともない話だけど…一応、不思議な話だと思うから話した。

……次は怖い話で頼むわ。

――フッ シュポ
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