百物語
今まで何も見えなかったのにそいつがこっち向くのと同時に見えたんッスよ?

オレはその女が人間じゃない事を理解しました。

そして、その女は真っ直ぐ大騒ぎしてた奴の事を恨めしそうに見てました。

オレは突然の出来事に唖然としてたんッスけど、オレのダチがそれに気付いて叫んだんッス。

「ギャアア!」

「な、なんだよ。脅かすなよ!」

でも、ダチは走って逃げてきました。

結構怖がりだったから。

「あっ、おい…っ!」

って呼んだけど、一目散に入口まで走って行きましたねー。

「なんだぁ?あいつ」

そう言う、そいつの方を振り返ると…

「!」

女が近付いてたんッスよ。
もう真後ろってとこらへんまで。

表情も変えず、ただそいつを睨み付けながら後ろに突っ立ってるだけなのに寒気が止まりませんでしたね。
「おい、あいつどうし、たんだ――!」

他の奴等もこっちに来てその女に気付いた。

「ぎゃ…ギャアア!」
「キャアアア!」

女のコ達は甲高い悲鳴をあげて逃げて、オトコも情けない悲鳴あげて脇目も触れずに走り出してましたね。
「な、なんだよ…!皆して…!どういう事だよ!」

そいつもビビり始めた時でした。

「死 ネ 」

という、憎しみの籠った声で女がそう言いました。

その声に振り向いたそいつは「ぎっ…ギャアアアア!」って狂ったように叫んで、スゲー悲鳴だったんで、オレはその悲鳴で我に返って逃げ出しました。

そいつも走って来ましたね。

2人で車まで行くと皆、中に居てオレ等も中に入った。

「おっせぇよ、バカ!」
「い、良いから早く出してよ!」

そう言ってエンジンかけたけど、お決まりのパターンでエンジンが入らない。

後ろを見ると女が追ってきてたもんだから、尚焦る。

「どうなってんだよぉ!」「早くしてよ!」

もう車の真後ろまでくる…!って所で女の姿が消えました。

「き…えた?」
「はぁぁ…マジ勘弁」
「おっ、やっとエンジンついた」

エンジンがついた事と、女が消えて皆が安堵して車を出そうとライトをつけた時でした。

「オ 前 等 呪 ワ レ テ シ マ エ……」

という声と、ボンネットに乗りフロントガラスに顔を近づけてる血塗れの女が現れた。

「ギャアア!!!」

――――それからの事は正直覚えてないッス。

いつの間にか駅まで戻ってました。

ただ、あの日からあそこに居たオレとオレのダチ以外の奴等が可笑しくなっちまいました。

あの女が言った通り呪われたのかは定かじゃないッスけどね。

…もしかして、花を直さなかったらオレ等も呪われてたかもしれないって思うとゾッとしますね。

これでオレの話はおしまいッス。

――あっ、もしここに未成年のコがいたら言っときますが未成年での酒や煙草は駄目ッスよ。――フッ シュポ
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