『うさぎ』日記
その後、興福寺境内には、
モミジの木が増えはじめ
鹿にモミジの組み合わせが
出来たと云う話です。
時として人間は、
本当に残酷なことをするものね!。」
夏帆が思わず
「小僧さん、可哀そう!」と涙していると
杉本先輩は
「この話には続きがあってね、
その時不在だった門跡と呼ばれる興福寺の
高僧は、後日この知らせを聞き
私が居れば助けてやれたやもしれぬと
悔やみ、哀れんだそうよ。
そして、せめて供養の為にと
小僧の享年の数にあわせて
明けの七つ刻と暮れの六つ刻に
十三鐘を鳴らすようにしたんだって!
今も興福寺境内に小僧さんの塚が
あるそうだから、奈良に行った時には
是非、お参りしてあげてね。」
と、締めくくった。
「あるそうだから」の
七文字が気になった夏帆は
「奈良出身のあんたは行ってないんか~い。」
とツッコミを入れたかったが、
口八丁の先輩のテンポに付いていけずに、
タイミングを逃してしまっている。