太陽と雪
「そうでございますよ?

彩お嬢様。

お嬢様は、時に、厳しいことも申します。

しかし、それは相手のことを、今回の件では奈留さまの今後を案ずるが故、でございましょう?」


「さすがね、矢吹」


矢吹には、何でも分かっていたみたい。


「渇を入れるのも……お上手でございますね。

そこは、奥様によく似ていらっしゃいます」


って……あれ?

何で貴方がそれを知ってるの?


矢吹……あの場にいなかったじゃない。



まあ……いいわ。


「久しぶりに、なんかワクワクしてきたわ。
さ、私は明日の準備をしなきゃいけないわ」


「準備……でございますか?」

「そうよ。

あ、矢吹!

彼に連絡とれる?
まだ、日本国内にいるはずよ!」


「彼、でございますね?
かしこまりました」


優秀ね。

矢吹。


あれだけで伝わるなんて。

カルロスと連絡…取れるのかしら。

一時期、彼が私たちの屋敷にホームステイしたことがあったの。

3年前かしら?

たしか、まだ住んでいるはずで…

日本の大学にいるらしい。

獣医師業に興味があるみたいだったし。

彼にも、練習に付き合ってもらいましょ。


三咲 奈留。

高校のとき、ドイツに短期留学もしていたみたいだけれど……

その実力……見せてもらうわよ。


「彩お嬢様。
高沢が連れてくるそうでございますよ?」


カルロス、なぜか高沢になついてるのよね……


高沢は、宝月家の専属医師。


「ええ。
そうしてくれるかしら?」

翌日の午後は、カルロスと高沢も一緒に、動物病院まで連れていって、生身のドイツ語を身体に染み込ませる訓練をした。


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