太陽と雪

克服

私は、矢吹を通じて相沢さんに頼んでいた。

「あの、あらゆる電波が遮断される部屋。
空いていたら使いたいのよ」

「かしこまりました」

急にこんな要望をしたのには、理由がある。

きっかけは、フランスから小包が届いたことだった。

監視カメラに偽造している、盗音機(特殊仕様で、監視カメラ機能もある)のテープだった。

そこには、弱った犬を連れてくる、全身を高級ブランドで固めるおばさんが映っていた。

爆笑と共に反応したのが、美崎だった。

「大ポカやらかしているわね。

全身をGがイニシャルの服で固めるなんて。

名前と素性を名乗って居るようなものじゃない。
全く、とんだ災難に巻き込んでしまったわね。
彩。

貴方の病院のスタッフを、1度ならず2度までも。

まったく。

……これを見抜けなかった、私の不手際だわ」

その映像が終わった頃、被害を受けた三咲 奈留の夫、葦田雅志からビデオ通話があった。

獣医を取り上げたドキュメンタリー映像やドラマの映像から目を背けているという。

ショックを受けたときの精神症状が出始めていることに気付く。

「行きましょう」

美崎の言葉に、待ったをかけた。

「その前に、待ってもらえるかしら?

30分あれば済む」

私は、内線で優秀な執事、矢吹を内線で呼び出した。

「あの人に、連絡をして欲しいのよ。

くれぐれも、失礼のないようにね。
私の恩師なんだから」

「かしこまりました。

旦那様からの情報ですと、まだ日本にいらっしゃるそうですよ。
すぐに来て下さるかと」

矢吹の言う通り、その人は、10分も経たないうちにすぐに宝月の屋敷に来てくれた。

「遠藤さん、お久しぶりです」

「彩ちゃんか。
久しぶり、と言っても、この間会ったばかりだがね。
事情は聞いたよ。

何でも、根深いPTSDになりそうな人がいるとか」

「ええ。

教授もご多忙ですのに、お手間を取らせて申し訳ございません。

将来有望な獣医師ですので、若い才能を潰すのは惜しいのです。

ご協力下さいますか?」

「他ならぬ君の頼みだからね。

喜んで協力しよう。

いい症例として、大学の講義でも使えそうだ」

「ありがとうございます、遠藤教授」

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