太陽と雪
目が覚めると、矢吹はいなかった。

何してるのよ、全く。

ふとスマホを開くと、チャットが来ていた。
麗眞からだ。

『急だけど、宝月家と矢榛家の結納、再来週の半ばになった。

そこしか椎菜の両親がスケジュール空いてないらしいんだ。

当日のしおり、出来たら姉さんにも送る。
姉さんにも来てほしいし』

その文言を見て、しばし絶句する。

そういえば、すっかり忘れてたわ。

椎菜ちゃんのご両親のクスリ騒動のほとぼりが冷めるまで、延期していたのよね、結納。


まったく。いろいろと急すぎるのよ。

『貴方ってば、やることなす事急すぎるのよ。

あまり、貴方の命より大事かもしれない椎菜ちゃんを振り回さないであげなさい。

何か困ったら力を貸すから、遠慮なく言いなさいな。

貴方が結婚しても、私は貴方の弟よ?

それは変わらないわ』

『姉さんにしては、嬉しいこと言ってくれるじゃない。

ありがと。

姉さん、テーマパークのホテルで椎菜にありがたいアドバイスしたみたいじゃん?

まぁ、結婚したら椎菜は姉さんにとって義理の妹になるわけだから、当然っちゃ当然だけど。

よろしく頼むよ。

これからも迷惑かけるだろうけど』

あんなに美人な、可愛い義理の妹ができることになるのだ。

少しは年上らしくしなければ。

その義理の妹は自己犠牲精神が強く、自分でも気付かないうちに無理をしては、しばしば病院のお世話になっているけれど。

そんなんじゃ、子供できたときに苦労するわよ?

さて、近い将来の義理の妹のために、少しでも出来ることをしなくちゃね。

下腹部の鈍い痛みをこらえながら、宝月家のデータベースにアクセスする。

IDとパスワードと虹彩認証。
セキュリティの素晴らしさに感謝だ。

条件を細かく指定して、執事を検索する。

彼女はよく無理をしては体調を崩すから、多少医学に明るい人のほうがいいわね。

あと、傍から見ても心配なくらいに食が細い面がある。

管理栄養士の免許だったり、その方面の知識がある人。

あと、なるべくなら落ち着いた雰囲気の人がいいわ。

同性から見てもスタイルが良い彼女だ。

性欲の塊のような人ではいけない。

そんな人は、麗眞が問答無用で却下するだろうが念の為だ。

やっと1件。

少ないわね。

該当したデータベースの情報を事細かに読む。
執事の前の職業は、アスリートの専属管理栄養士をしていたようだ。

桜木 桂太(さくらぎけいた)

婚姻歴は1だが、妻の情報がない。

子の情報はある。

既に子供は社会人らしい。
子供の歳は、椎菜ちゃんや麗眞と同い年だ。

隅々まで目を通して見ると、妻はすでに亡くなっているようだ。

出産後、子宮がんがわかり、余命は長くて2年と言われる。

闘病の末、妻が延命治療を臨まなかったため、がんによって亡くなった……

何だか、踏み込んではいけない領域に踏み込んでしまった気がするわ。

でもまぁ、この人なら椎菜ちゃんに変なマネはしないでしょう、少なくとも。

彼女の身体がちゃんとした健康体ではないところも、甲斐甲斐しく面倒を見てくれるはずだ。

『麗眞、椎菜ちゃんに良さげな執事の情報を調べたから、送るわね』

データベースの情報を付加し、麗眞にチャットを送る。

彼も宝月家の人間だ。

データベースにはアクセスできる。

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