太陽と雪
「椎菜、世界一愛してる」

「ありがと、麗眞。
私もよ。

結婚相手が麗眞で良かった。

小さい頃から一緒にいた甲斐あったかな」

「可愛いこと言うな。
5回目お望みなの?」

ホテルの部屋に着いてからというもの、何度も身体を重ねている。

今は休憩も兼ねて、2人で泡風呂に浸かっている。

10月にもなると、さすがに夜は冷える。

「寒くない?

椎菜」

「麗眞とこうしていられればあったかいもん。
大丈夫だよ?」

「椎菜。
可愛いこと言うと、ホントに寝かせないよ?

今もキワドい位置にあるし。

まだ無しでするのは抵抗あるだろ?」

椎菜がくっついてくるものだから、俺の下半身は既に大きさと硬さを増している。

「もう、麗眞ったら。

今日はもう眠いから、寝たいの。

朝起きたら、ね?」

俺の頭を撫でて甘やかす辺りは、さすがに幼少期から一緒にいるだけある。

俺を手懐けるのはお手の物だ。

「ん。

椎菜が言うなら、ちゃんと朝まで我慢する。

朝になったら、覚悟しとけよ。

そろそろ上がるか、のぼせる。

先出て服着てな。

湯冷めしないようにな」

「ありがと、麗眞」

俺の唇にそっと温もりをくれた彼女は、おずおずと浴槽からあがって、先に脱衣場に向かった。

椎菜を見送りながら、結納の際にお披露目する品は何にしようか考える。

俺も、俺の姉さんもそうだが、この家のセキュリティが厳重であるが故に、カードを何種類も持たされる。

そう考えると、カードケースがいいだろうか。

ただ、色違いや同じ色など、2人の絆を示すものでなければならないのだ。

カードケースにするか。

俺も浴槽からあがり、脱衣場に向かった。

とりあえず結納の品を決めたことを姉さんにメールで報告する。

俺が着替えを終えて脱衣場から出ようとすると、ヘアアイロンを必死に当てている椎菜の姿があった。

椎菜の綺麗な茶髪はまだ、水気を含んで言うことを聞いていなかった。

「髪、まだ濡れてるぞ。

ちゃんと乾かしてからにしろ?

奥さんに風邪ひかせる旦那なんていないから、手伝うよ。

手も疲れるだろ」

彼女の温かい手からドライヤーを奪うと、て手触りのいい髪を梳くように撫でる。

また彼女を抱きたくなったが、ここは我慢だ。

寝かせないわけにはいかない。

可愛い顔に隈を作らせては婚約者失格だ。

「ありがと、麗眞。
そういうとこ、大好き」

「さらっと言うな。

明日の朝、覚悟しとけ?

髪乾いたよ。

先に部屋戻ってな、眠そう」

綺麗な茶髪を撫でると、軽く額にキスを落として、脱衣場を出る彼女を見送った。


俺も戻るか。

可愛い婚約者を寂しくさせるわけにはいかない。

ふとスマホを見ると姉さんからメッセージが来ていた。

『結納の品、カードケースにするのね。
こんなのどうかしら?

2つ折りのカードケースよ。
10枚は入らないけれど、それに近い数は入るわ。
両側のファスナーには小銭とか実家の鍵を入れられると思うし。

頼むなら早く返事を頂戴。

明日には届くようにするわ』

文章の下には画像があった。

馬車を意味するブランド名のロゴがしっかりと印字されていた。

椎菜はあまりハイブランド品は持ちたがらないが。

結納の記念品だ、小物ならさりげなくていいだろう。

色もブラックと黄色がかったオレンジ、フューシャピンクがあった。

椎菜は女の子らしい小物が多い分、このピンクの色味とは合わなそうだ。

夏らしい太陽みたいなイメージの彼女に似合う、オレンジを選択した。

俺は黒にする。

姉さんにオレンジと黒で頼むと返事をする。
これで結納の品は何とかなりそうだ。

明日、お礼を言っておこう。

俺も脱衣場を出ると、椎菜はベッドの上ですやすやと寝息を立てていた。

彼女を起こさないように隣に潜ると、小声でおやすみを言い、眠りについた。
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