太陽と雪
挙式

結納

結納当日。

もう、街はキラキラと眩しい電飾で、華やかに彩られる季節となっていた。

俺の別荘の和室で結納を済ませた後、そのまま食事会へと移行する。

結納の品は、俺と椎菜で色違いのカードケースになった。

昨日提出したばかりの婚姻届も、お披露目した。

「改めて。

椎菜ちゃん、ようこそ、宝月家へ。

歓迎するわ」

姉さんが口火を切ると、親父やおふくろ、矢吹さんからも拍手が上がった。

この模様は、録画されている。

今は美崎さんを捜しているであろう相沢にも、見せられるようにだ。

「椎菜ちゃん。

君が宝月家の一員になってくれて、私もとても嬉しいよ。

孫は早くに見られそうだし。

それは冗談として。

君には宝月家に加わって間もないこともあって、この家を俯瞰で見てほしいんだよ。

外の人間にしか見えないことも多くあるだろう。

それを逐一、教えてほしい。

麗眞が新しい当主となって、舵取りをする新しい宝月家。

それを作る一助になってほしい。

その役割を、大いに期待しているんだ」

親父の言葉に、パチ、と何度か瞬きをしてから、椎菜は晴れやかな笑顔で答えた。

「もちろんです。

お義父さんの仰る通り、私は正式に、昨日宝月の苗字になったばかりです。

知らないことも、まだまだたくさんあります。

幼少期より、よく家にお招きいただきました。

しかし、客人としてひたすらに感激していただけでしたから。

私に出来ることがあれば、どんなことでも。

何なりとお力添えをする所存です」

「貴女みたいな方が麗眞と出会ってくれて、良かったわ。

これでも麗眞の次の当主も安泰ね。

さすが、動物を通して飼い主の心まで救う獣医という仕事を続けていただけあるわ。

度胸がある。

普通は、こんな席で先程蓮太郎が言ったようなことを初めて聞いたら、何かしら狼狽するものよ。

そんな様子は一切なかったもの。

次期当主を支える妻として、一番大事な素質よ。

いい伴侶を選んだものね、麗眞も。

不安はすぐには払拭されないのは分かっているわ。

もちろん、私も蓮太郎も、長女の彩も。

貴女を支える為のバックアップは惜しまないつもりですから、気を楽にして下さいね」

おふくろにも、手放しで褒められていた。

我ながら、いい人を奥さんにしたな。

「まだ、式の日取りや人数など、詰めている最中ですので、具体的に何も言えずで申し訳ございません。

必ずご報告しますので」

「いいのよ。

あなたたちのペースで、ゆっくりね。

困ったら、相談には乗るわ。

すぐに、とはいかないかもしれないけれど」

「そうだぞ。

もう、私たちと麗眞くんは家族なんだからな。

遠慮しないでくれ」

椎菜の両親……
いや、お義父さんとお義母さんも、そう言ってくれた。

いい人を家族にしたなぁ。
< 254 / 267 >

この作品をシェア

pagetop