太陽と雪
高校時代の仲間と写真を撮ったり、奈留さんや雅志さん、和之さんや悠月さんとも写真を撮った。

琥珀ちゃんは、和之さんを見て腰を抜かさんばかりに驚いていた。

「え!?
麗眞くん、希代のピアニストさんと親交あったわけ?

いつの間に!?

後で、お時間のある時でいいので!

連弾、1曲お願いします!」

土下座せんばかりに頭を下げた琥珀ちゃんに、皆ポカンとしていた。

少なくとも、高校時代、彼女のこんな姿は見たことがなかった。

失礼だろう、と止める琥珀ちゃんの恋人の優弥をよそに、彼はにっこりと微笑んだ。

「今でも構わないよ。
曲は、貴女にお任せしようかな。

宜しくね?」

即席のピアノ演奏会がスタートした。

やはり、ピアノの前に座ると、琥珀ちゃんの目の色が変わるのは昔のままだ。

憧れの人の前でも、それは変わらなかった。

「モテモテね、和ったら」

「そうかな?

でも、僕にとって一番大事なのはゆづだけだからね?」

公の場でも愛称で呼び合う2人を見て、今度は琥珀ちゃんが一瞬、口をあんぐりさせていた。

それと同時に、チラ、と優弥を見て頬を膨らませたのだった。

ピアノ演奏に尺を取られたせいで、
予定していた本物の余興は式の終わり頃になったのだという。

医師に精神科医、音楽教師に体育教師。

多忙なメンツがいつどこで練習したのか、一糸乱れぬダンスを余興で披露していた。

「琥珀も頑張ってるわね」

「まったくだ、俺の娘なだけあるよな」

琥珀の両親の有海さんと奈斗さんが、自分の娘を自画自賛していた。


「琥珀も相変わらずだね。

おめでとう、麗眞くんに椎菜。

素敵な式に呼んでくれて、感謝しかない。

私たちもいつかやるときの参考にもなるし」

「おめでとさん。

俺と同い年の麗眞のお姉さんより、麗眞の方が先になるとはな。

幸せになれよ」

そう言って、祝福の言葉をくれたのは、Webデザイナーとして働く碧ちゃんと、薬剤師の成司だ。

つい最近、理名ちゃんたちがいる病院の薬剤師になったようだ。

「何とか有給もぎ取ったよ。

いい式に呼んでくれて、ありがとうな、麗眞に椎菜ちゃん。

優秀なスタッフがごっそり抜けたんだ、今頃病院はてんやわんやだろうがな。

学生時代の学園公認カップルがこんな挙式したんだ、俺たちもそろそろ頃合いかな、とは思うけど。

なかなか有給取れなくてな、タイミングが図りづらい」

それは、成司から碧ちゃんへのプロポーズ、ということか。

高校時代の仲間に恩返しをしないほど薄情ではない。

しかるべき時には、俺も何かの形で協力してやりたい。

こうしていい仲間に囲まれて、素敵な奥さんも傍にいてくれて。

幸せとは、こういうことを言うのだろう。
< 258 / 267 >

この作品をシェア

pagetop