太陽と雪
彩と涼は、よもや今の会話が、自分の両親や弟、そして義理の妹にライブ中継されていたなんて知る由もなかった。

翌朝、彩は危うく、遅刻するところだった。

まだ頭がふわふわしていて、食堂に降りてきていた麗眞にからかわれた。

「姉さんも幸せなのは分かるけどさ?

公私の区別はちゃんとつけなよ?

どんだけだよ、矢吹さん。
所有印刻みすぎだろ。

今日は仕事休んだら?

散々愛されて腰も痛いんだろうし。

薬指にカルティエの婚約指輪が嵌ってるのにも気付いてないみたいだしさ、姉さんは。

そんな状態で病院行ったら、雅志さんや奈留さん、ビックリするぜ、きっと」

いつの間に、サイズピッタリな婚約指輪が嵌っていたんだろう。

どうせ渡してくれるなら、夜景が綺麗なところでプロポーズされたかった。

……ん?

ちょっと待て。

「え?
ちょっと、なんで麗眞がそれ知って……

もしかして……アンタの同級生が皆持ってる機械で盗聴してたの?

ヤダ、変態!

いくら先に既婚者になったからって調子に乗らないでよ」

「俺じゃない!

親父とおふくろだよ!彩も幸せになって貰わないとな、ってライブ中継しようって言い出したの!

おふくろなんて、さすがは俺の結婚式でブーケをスライディングキャッチしただけのことはある、って大爆笑してたよ。

親父も、孫も見れるし、これで宝月の家も安泰だ、って嬉しそうだった。

じゃ、俺は仕事だからもう行くわ。

ついでに、椎菜を病院まで送る用事もあるし。

健診ついでに制吐剤貰う。

悪阻酷くて、俺が心配なんだわ」

相変わらず、奥さん溺愛なんだから……!

っていうか、パパとママ、アメリカにいたんじゃなかったの?

「早く朝食を食べないと、仕事に遅れますよ?
彩」

朝、涼はパパの部屋に呼ばれたという。

私の恋人となったからには、執事として側にいさせられない。

そこで、情報処理室の副責任者に異動となった。

当のパパは、MLBを観に行く、野手と投手の2wayplayerの勇姿を見るのだと言って、トンボ返りしていった。

まさか、これを言うためだけに帰ってきたの?
わざわざ?

ママはアメリカの別荘でMLBの試合の感想を語る生配信をしているようだ。

両親揃って、好きだねぇ。

私は、スポーツには興味ない。

体育の成績なんて、悪すぎる実技を筆記試験で補って何とかしていたくらいだ。

ただ、選手の給料を払うのにローンを組んで払った赤字球団があるというのは、少し引っ掛かる。

ちょっと勉強してみるかな。

「野球のルールなんて、そのうち覚える。

経営だけに長けた人員がいれば、選手たちもプレーに集中出来て、今よりもっと素晴らしい成績が残せると思うんだけどな。

今は日本人選手も多く海を渡って活躍している。

毛嫌いしないで、1度観てみるのもいいんじゃね?

俺の親友たちなんか、すっかりハマって、有給取って現地観戦してるぜ」

麗眞までそんなことを言うなんて、余程面白いのね。

麗眞は私に1枚のDVDと1冊の書籍を渡してきた。

DVDは、何年か前、日本が世界大会で優勝し、連覇したときのもの。


書籍は、何かと話題を攫う2wayplayerの選手が表紙となっている。

彼がMLBの球団に入団してからの軌跡が、詳細に綴られているそうだ。


暇があったら目を通してみることにするか。

代わりの執事が決まるまでは、こうして涼にお世話をして貰っている。

恋人なのに、執事時代の敬語が抜けないのも可愛い。

「分かったわ。

早く食べるから、ちゃんと職場まで送ってよね?涼」

「仰る通りに致しますよ、彩」

こういう何気ない日常が続くことを、幸せというのだろうか。

やっと掴んだ幸せを、離さずに掴んだままでいなくちゃね。

涼なら、何があっても支えになってくれるというのは、執事時代から知っている。

これからは執事じゃなくて、恋人として宜しくね、涼。

そんな思いを込めて、そっと涼に口づけた。


Fin.
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