太陽と雪
アトラクションに乗り終えて、またパークに降り立ったとき、矢吹に言われた言葉。


「お嬢様。
なかなか、可愛らしい悲鳴でしたよ?」


さっきみたいに褒められるかと、期待していたのに。


バカにされた……


アハハハハ!
ダメだ、腹よじれるかと思ったわ……

また土産話が増えたな。

まぁ、土産話たっぷりの方が、親父もおふくろも喜ぶだろ」


麗眞なんて……笑ってるし!!

もうっ!

皆して……何なのよ……!


「私は、アトラクションに乗る前に半泣きになっていらした彩お嬢様が一番可愛かったですけどね?」


ホラ…また、そうやって。

笑顔を浮かべながら……私の本心に訴えかけてくる。


「……仕方ないわね。

そのフォローしてくれただけありがたいわ。
許してあげるわよ」


「そのお言葉……ありがたく頂戴致します」


テーマパークにも関わらず……教科書通りに頭を下げる矢吹。


「さあ……
そろそろお腹も空いた頃でしょう。

もうランチに致しましょうか。
少し歩きますよ?」


そう言う相沢さんに付いていく。

もうっ……!

何が……少し歩きますなのよ。
少しというには歩いた気がする。

そういう、「少し」とか「ちょっと」とか、曖昧な表現は止めてほしい。

具体的な時間がほしいわね。


「お嬢様?

また……靴擦れを起こしましたか?」


「矢吹。
心配無用よ。

少しって言い方に引っかかっただけ。

具体的に、時間が欲しいなって」


そう返して、歩く速度を早める。


「もう少しのご辛抱ですよ、彩お嬢様」


この男……
笑みを讃えてそう言う辺り……絶対知ってるわね?

私が歩くの疲れただけって。


まあ…私の執事だから当然なんだけれど。


「さあ、到着いたしましたよ」


見上げると、豪華な客船が目の前にそびえ立っていた。


宝月家が所有している豪華客船と同じくらいの広さだ。
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