太陽と雪
ロビーラウンジに着くと、すでにカクテルパーティーは始まっていた。


「あら、意外ね。
麗眞までいるなんて。
相沢さんは?」

麗眞も誘われているとは、初耳だった。

まぁ、お互い次期当主になるかもしれない身。
誘われて当然か。


「ああ、相沢か。
相沢はな、ホテルスタッフの手伝いをしてる」


そっか、このホテルのスタッフは、ほとんどが宝月の使用人で構成されている。

一部、違う家の人も混じってるようだ。
違う家の人について、詳しくは知らない。


「彩さん?
わざわざご参加下さって、ありがとうございます」

二重の目が印象的な、マロン色の髪をした女性が近付いてきた。


「いえ、こちらこそ。
素敵な場にお招き、ありがとうございます」

「我々、城竜二家の人間が企画したんですの」


……城竜二?

その名字には、聞き覚えがあった。


あれ?
そういえば、この人……懐かしいな……

どこかで会った気がする。

高校のときはよく遊んだのを覚えている。

必死に記憶を呼び覚ます。

確か……最近卒業アルバム見たわよね…?


「あっ!
美崎っ
……城竜二 美崎(じょうりゅうじ みさき)よね?」


高校のときは梓や玲子といった友人と4人でグループを作ってよく学校帰りに遊んでいた。
途中から、転校してきた麻未(まみ)も入って、5人になった。


「そうよ?
よく覚えていたわね?
彩」


髪をマロン色に染めていたから、分からなかったわ。

当時は、美崎の髪色は茶色だった。

「取り合えず、乾杯しましょ?」


「そうね。
久しぶりに会ったんだものね」


二人で顔を見合わせると、カチンと音を立ててグラスを鳴らした。

そうして、グラスを軽く傾けてカクテルを口にする。


「味、気に入ったかしら?

城竜二が開発した試作品なのだけれど、モニターも兼ねて皆様にお出ししているの」

「さすが美崎。
私の好み……分かってるじゃない」


私は、口当たりのまろやかなカクテルが好きなのだ。

上品で大人の女性ということを印象付けられるから。


そういえば……矢吹は何してるのかしら。

ちょっと気になるわ。

もうちょっと……素直に言うこと聞けば良かったかな……

邪険にしちゃって、悪かったな………

矢吹に会いに行こうと思ったが、カクテルを呑み干してからにするつもりだった。


カクテルを呑み干した後、ホテルの自分の部屋に向かおうとした。


……だけど。


急に、強い眠気を感じて、椅子にとり付くようにして倒れた。
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