十三日間
おっさんは、昼前に連れ出されるその時まで、喚き続けていた。

絞首刑になる為、前日の夜から何も食べ物は与えられなくなる。
首を絞められた人間は、全て垂れ流して死ぬから、何も食べさせないで、なるべく掃除を楽にしようと言う考えのようだ。

看守たちにしてみれば、空っぽになるまで、何日間も食べ物を与えたくないくらいの気持ちだろう。

冗談じゃない。

最期に空腹で逝かなくてはならないのは、正直俺にとっては辛い。
貧しかった幼い頃を、嫌でも思い出すからだ。
教育を受けるようになってからは、一日に二度の食事は必ず与えられてきたから、その時から、俺は死を覚悟する程の空腹は、一度も味わったことはなかった。

二度とごめんだ。

たった二食抜かれるくらい、どうって事はないのだけれど、それでもできれば空腹ではいたくない。

それが、俺の唯一の無念ではあった。
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