十三日間
家に帰ると、台所の机の上に、プリクラが見えるようにさりげなく携帯を置く。
実際、さりげなかったかどうかは、この際問題じゃない。

案の定、兄さんが食いついた。

「お、伶、これおまえの彼女? かわいいじゃん!」

うんうん、セオリー通りの反応だね。
ありがと、兄さん!

「え、伶ちゃんの彼女? 見せて見せて!」
母さんまで台所からすっとんできた。
「あら、伶ちゃんも写真映りいいわね。彼女もかわいいじゃない。名前、なんて言うの?」

僕の写真映りまでチェックするとは、さすが母さん。

「大木みくるって言うんだ」
「みくる……? どんな漢字? 未来って書くの?」
「違うよ、ひらがなで、みくる…」

……あれ?

「そうなの、名前も可愛いわね。いいわね、女の子は」
母さんの相づちは耳に入らなかった。

…ミクル。

未来って書くの、かな?

…ミライ。

なんで、みくるちゃんの名前を呼ぶ時みたいに、愛おしくなるんだろう?

…ミ・ラ・イ……


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