十三日間
何故だろう?
俺とは全く無縁の感情を、その香りは思い起こさせる。

例えば、家族愛。
友情。
恋愛。
何かに夢中になること。

どれも、俺には無縁だ。

家族はいない。天涯孤独の身の上だ。

友情を感じるような友もいない。他人は信じられない。

女に愛情を感じたことはない。必要なのは身体だけだ。
楽しみのために、何かに夢中になるなど、ばからしい。生きていくために必死になることはあっても、夢中になったりしたことはない。

そうやって生きてきた。

それが、俺だ。

それを後悔したこともない。

…なのに、ここに来てから、何かが狂ってきている気がする。
今までうなされた事などなかったのに、悲鳴を上げて起きるような目にあったのも、ここに来てからだ。


…やはり、俺はあの事を、そんなにも強く後悔しているのだろうか…?

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