囚われジョーカー【完】



正直、この時の俺はあんまり篠宮と会話を交わしたことがなく。

顔を合わせた時に軽く挨拶、とか。仕事上で必要になる範囲での会話ーくらいな。


雰囲気が随分大人っぽい彼女は、それだけでなかなか近寄りがたい存在だったのだ。



と。

ガチャリ、ドアが開く音がして。視線をそちらへと向ければ、あちらの視線ともバッチリかち合う。


「あ…」

「あ、お疲れ様です。」


ペコリ、頭を小さく下げて見せた彼女こと篠宮は俺の横を通り過ぎてパイプ椅子に腰掛けた。


なんてグッドタイミング。てか、タイミングよすぎて逆に怖いなんて思いながら俺も篠宮と向き合う位置から一つずれた位置の椅子に座る。



携帯を開き、小さく溜め息を吐く篠宮の俯いた篠宮の頬に長い睫毛の影が落ちる。


思わずジ、と見つめてしまっていれば。その視線の矢に耐えかねたのか、篠宮が俺を上目に見上げた。



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