囚われジョーカー【完】
「っと…」と、何かを思い出したような声を出した三浦さんは一度回していた腕の力を緩め私の方にコートをかけた。
え?と目を瞬かせた私に三浦さんは煙草を指に挟み、紫煙を吐き出す。
「お前が着ろ。」
「……、」
「んで、…ん。」
三浦さんは、もう一度私を抱きしめて耳元で囁く。
「お前に風邪ひかれたら俺が困る。」
「でも、三浦さんの方が薄着…」
「俺は菫抱き締めとけば平気だから。」
「……。」
そう言い切られてしまった以上、強く反論できない。内心納得は出来ていないけど、多分私が何言っても三浦さんは聞かないだろう。
丸め込まれたようでなんだか癪に障る。
香るシトラスが私を包むようで、もどかしい。
何時の間にか暗くなっている闇に呑み込まれそうだとか思ってしまった。