囚われジョーカー【完】
バッグをひっつかみ玄関へと向かう。
ショートブーツに足を滑り込ませれば、ひやりとした冷たさが足裏を伝って。それがまだぼーっとしていた頭を覚醒させる。
鍵を回し、ドアを押そうとした瞬間。
「菫。」
「なんですか。」
「今日の晩、来て。」
名前を呼ばれ、ゆっくりとした動作で振り返り会話を交わす。
壁に手をついて私を見据える三浦さんは先程とはまるで別人。
胸元がはだけたシャツではなく高そうなダークグレーのスーツに身を包んでいて。髪も前髪をバックに流すようにセットしている。
何時もより幾分か老けて見えると思う。
「…似合わない。」
呟いた、私はぷいっと目を逸らした。
嘘、本当は似合ってる。