。*雨色恋愛【短編集】*。(完)
「ただいま~」

「お邪魔しまぁす」

梨那は、うちの両親とも仲良くて、あたしも

梨那の両親と仲良くて。

だから、家に行くなんて、よくあること。

「おかえり、奏歌。久しぶりだね、梨那ちゃ

ん」

「お兄ちゃん」

「陽さん、お久しぶりです」

「なに?今日はどうした?」

「今日、奏歌をうちに持って帰りたいんです

けど~、陽さん、いいですか?」

「え~。俺、今日奏歌で遊ぼうと思ってたの

に~」

ギュッとあたしを後ろから抱き締めて、頭を

撫でながら言うお兄ちゃん。

「お兄ちゃんっ」

「奏歌は愛されてるね!!でも、陽さん。今日

は譲れないので、奏歌借りますね♪奏歌ママ

には了承もらってるんで」

いつの間に?

「梨那ちゃん、強敵だな~。じゃあ、しょう

がない。奏歌を1日だけ、レンタルしましょ

うか」

「お兄ちゃんってば」

やっと離してくれて、あたしの荷造りを手伝

ってくれる。

早く帰って来いよ~。てか、明日は学校だ

し。俺、明日暇だから、帰り迎え行くから。

荷物、多いし」

「うん。ありがと」

「じゃあ、楽しんでこいよ」

「うん!!」

梨那の家に向かう。

梨那は、あたしの荷物を半分持ってくれて、

にこにこと話してくれる。

「奏歌は、陽さんに愛されてるね、本当に。

陽さん、極度のシスコンだからな~」

「シスコンじゃないでしょ。昔からだし」

「昔からシスコンか~。じゃあ、奏歌は気づ

かない」

「まぁ、お兄ちゃんのこと大好きだしね」

「あっ、ブラコン発見」

「違うってば~」

…なんでかな。

お兄ちゃんのことは、素直に好きだって言え

て、素直に想いを伝えられるのに。

なんで…

なんで奏には、伝えられなかったんだろ。

…あたしなんか嫌いだ。

なんで…あたしは素直になれなかった?

奏…ごめんなさい。

あたし、奏のこと…嫌いになれそうにもあり

ません。
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