。*雨色恋愛【短編集】*。(完)

愛の犯罪

やっと見つけたから。

あとは君が好きだった、本当に澄んだ青空の

日を待つだけ。

…もう少しなんだ。




「…やっと晴れた」

待っていた、こんな日。

今日は、快晴と呼ぶのにふさわしい日だと思

う。

早く、行かなきゃ。




俺が足を止めたのは、あの場所。

「……結愛…」

いつも、俺と結愛が別れていた道。

そして今日は…

結愛の命日である。

もう、朝にお墓へは行ってきた。

結愛、結愛、結愛…

俺の頭の中は、今も結愛でいっぱいだよ。

先に結愛の家に、挨拶に行こう。

「…こんにちは」

「あら、儚くん。来てくれたのね」

結愛のお母さんは、こんな俺に、本当の笑顔

を向けてくれていた。

ありがとう…おばさん。

「儚くんが来てくれたら、結愛も喜ぶわ」

今も生きているように話す、おばさん。

きっと、おばさんの心の中で、結愛は今も生

きているんだよな。


「お邪魔しました」

「来てくれてありがとね。また来てくれると

嬉しい、おばさん」

「また…機会があったら、お邪魔します」

俺…

やっぱり、結愛が好き。

こんなに優しいお母さんがいる、結愛が好き



結愛を愛してくれてる、おばさんが好きだ。




「……いた」

やっと見つけた。

今、俺のすごく近くにいる、俺が一番憎んで

いる奴。

…あの時のホームレス。

結愛を殺したっ……!!

憎い。

俺から、大切な結愛を奪った奴。

やっと見つけたんだ。

結愛が残してくれたカメラに、しっかり残っ

ていた、こいつの写真。

…結愛。

結愛…

俺、今から、結愛のために………

いや、俺自身のために…

愛の犯罪を犯すよ。

こんな俺で、ごめんな。

大好きだよ。

結愛―…
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