。*雨色恋愛【短編集】*。(完)

「…儚?」

結愛の声がする。

これは、夢?現実?

「儚、起きてよ~」

肩を揺らされて、現実な気がしてくる。

結愛の手の感触がある。

でも、夢な気がする。

今も、あの夢を見てたし。




「儚」

「ん?」

「儚は、天国と地獄の間の世界って、あると

思う?」

「えっ、俺らが生きてるとこもあんじゃん」


「違うよ~。死んだ人が行く世界で」

「ん~、ないんじゃない?」

「そっかぁ…ないのかぁ」




ちょっと寂しそうに笑う、結愛。

いつも、これで夢は終わりなんだ。

また、同じ夢を見てるだけなのかもしれない

し。

「儚?」

結愛がいるなら、同じ夢でも見たい。

「結愛?」

「あっ、やっと起きてくれた」

優しく笑う、結愛の姿。

目を開けているのに、結愛が近くにいる。

「結愛…会いたかった」

結愛を思わず抱き締める。

「儚…本当に迎えに来てくれたんだね」

「えっ?」

結愛のその言葉にびっくりして、周りを見渡

す。

そこは、なにもない、無色の空間だった。

「儚…あたしのために仕返しして、自分まで

死んじゃうんだもん。あたし、びっくりしち

ゃった」

「えっ…」

「…ずっと見てたよ、儚」

じゃあ、ここはどこ?

俺は死んだんだよね?

「う~ん…頭の良い儚でも、いまいち意味わ

かんないよね…え~と、ここはね?」

結愛が、俺がずっと見てた笑顔で俺を見つめ

る。

「ここは、なんていうか…なにもない世界な

んだ。もちろんって言うのも変だけど…あた

しも儚も、もう生きてないよ」

「…俺と結愛以外の人は?」

「いないよ。多分なんだけど、ここは自分も

相手も一緒にいたいと思う人しか、一緒にい

られないんだよ」

「えっ…」

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