。*雨色恋愛【短編集】*。(完)
半分は女子の声。

今日もふたりはカッコイイとか、そんな感じ

の声。

半分は、男子の声。

おはようって声と、一緒にいる子誰?とか、

あたしのことに関する声。

それに答えるのは、夏喜クン。

「秋山奏歌ちゃんだよ。今年から、特進クラ

スになった」

「奏歌です。よろしくお願いします」

相手が頭良いからかな。

敬語じゃなきゃいけない気がする。

「俺、ヒロ。よろしくな、奏歌ちゃん」

「うん。よろしくね」

「奏歌ちゃん、席見てこよ」

「うん」

尚斗クンは、なぜか不機嫌そうな声を出した

から、あたしは素直に従った。

「うわ~…あたし、一番前…」

一番前なのは、ほとんどいつもなんだけど、

やっぱり毎回ショック受ける。

「俺、窓側」

「尚斗クン、いいな~。あたし、一番前」

「残念だったね。けど、俺も夏喜も後ろの方

に席あるから、休み時間は俺らの席の方、お

いでよ」

「うん。そうさせて?」

尚斗クンと仲良くしてるせいかな…

女子には、睨まれっぱなし。

夏喜クンもいるもんね…

「あ…」

尚斗クンが、席の表を見て、小さく声をこぼ

した。

「ん?」

あたしも、同じように席の表を見る。

ふと、あたしの隣に目を移すと…

「…隣、奏じゃん」

なんで…?

あたしは、奏とクラスが一緒にならないよう

に、特進に来たのに。

なんで…

奏まで、特進クラスになってるの?

「やっぱ、休み時間になったら、すぐに俺の

席来て」

あたしの目を見て、尚斗クンは話す。

「うん」

…あたしのこと、心配してくれてる。

「…ありがと」

「尚斗~、奏歌ちゃんっ」

「なに~?」

夏喜クンは、やっぱりクラスの人気者みたい

で、男子に囲まれて話している。

「今日、バスケやろ?奏歌ちゃん、久しぶり

にやりたくない?」

「ん~、どうしよっかな」

…実は、まだリスカしてから、一度もバスケ

やってないから。

…怖いっていうか。

戻りにくくて…

でも、クラスのみんなとだし…

夏喜クンもいるし…

「やろ!!久しぶりに、やりたくなった!!手加

減なんてないからね!」

久しぶりにバスケができると思うと、すごく

嬉しくなって、ニコニコしちゃう。

「でも、今日って昼休みないんじゃ…」

「今日、普通クラスがホームルーム終わった

あとに、補習するんだよ」

「そうなの!?知らなかったぁ…」

「だから、バスケできるよ!」

「じゃあ、やろっか!!」






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