。*雨色恋愛【短編集】*。(完)

-席がえ-

あたしは、結局…尚斗クンと付き合うことに

なって。

それから、一緒に帰るのは当たり前で、その

時、手を繋ぐのも、普通になってきてる。

でも、告白された時以来、尚斗クンに呼び捨

てされたことはない。

あの時のは…夢?

聞き間違いだったのかな?

「奏歌ちゃん、帰ろ」

「あっ、うん」

「ラブラブやな、ふたり」

「バイバーイ、カナ」

「奏歌ちゃん、また明日」

ヒラヒラっと振る、マツの手に応えて、あた

しも手を振る。

…ラブラブだって。

それは、単に尚斗クンが、以前よりも優しく

なっただけじゃないのかな?

梨那に、尚斗クンに告白されたことを言った

ら、やっぱりって言われた。

あたしに、なんで勉強教えてるのか聞いた時

には、気づいてたらしい。

言ってほしかった。

そしたら、尚斗クンに、違う接し方をできた

かもしれないのに。

「尚斗クン、あたしさ…」

「ん?」

「やっぱり、あたしは…」

「別れの言葉は聞かないよ。俺、奏歌ちゃん

と別れたくないから」

「…うん。それでもいいなら」

「いいんだって。だから、一緒にいて」

「うん」

…一緒にいて。

それは、あたしの言葉を代弁してるみたいに

聞こえてくる。

…ごめんなさい。

あたし、ただ尚斗クンは利用しているみたい

になってるよね…






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