。*雨色恋愛【短編集】*。(完)
あたしが、真剣に悩んでいると、なにか物音

がした。

顔を上げると…

奏が、あたしの机に席をくっつけた音だった

みたい。

あたしの視線には、立っている奏。

見た目は、確かにチャラくなったけど…

やっぱり、カッコ良くって。

優しさが…顔に表されてる気がする。

「…忘れたんだろ?やるぞ」

…そう言って、座った奏に、ドキドキ。

奏が、間近にいる…

…やめて。

ドキドキしないで、あたしの心臓。

ワークを見ようとすると、奏の横顔も目に入

って。

すごく真剣にやっている、奏のペンの先が気

になる。

あたしも、気にせずに、課題を進めなきゃっ

て、頑張る。

尚斗クンに、基礎を教えてもらったからなの

か、すごく簡単な問題。

あたしが課題を終えると…

もちろん、余裕で終わっている奏。

そうだよね…

あたしが、奏のこと考えてる間も、奏は課題

を進めてたんだから。

もう一度、見直しをしようとして、ワークを

見ると…

奏の字が、書いてあった。

[あいつと付き合ってんの?]

…そう書いてあった。

あいつって…尚斗クン?

[うん、いちお]

[じゃあ、あの関西弁の奴は?]

…関西弁?

[マツ?マツは、友達だよ]

[告白とか…されてねぇの?]

[ないよ]

[あいつのこと…好きか?]

…尚斗クンのこと、だよね?

また、あたし…騙されてるのかな?

この前みたいに、バカにされるのかな?

また…辛い想い、しなきゃいけないの?

[…好きになる]

…無難な返事。

これ、尚斗クンが聞いたら、悲しむかな?

[今つけてる、ブレスレット]

…字、止まったし。

ブレスレット…?

不思議になって、奏の方を見ると…

[3本目の星のやつ…気に入ってるか?]

…星のやつ?

あっ、梨那が別のお店で、特別に買ったって

言ってたやつ。

[うん。梨那がくれて、すごく好きだよ]

3つくれたやつ、どれも好きだけど、これが

一番のお気に入りだし。

[そっか。気に入ってるんだ]

…言葉、いつもより優しい?

[なんで、ブレスレットの話?]

[なんでもないよ]

優しいよね、言葉使い。

[ワーク、見せてくれてありがと]

[困ってたから…]

[ありがとね]

そして、会話は終了。

奏が、ワークに書いた、これらの字を、消し

ゴムで消してく。

[…好きだよ]

「えっ?」

最後に…そう書いた気がした。

思わず…声を漏らしてしまった。

課題の時間が終わって、授業をするけど…

奏に、さっきの言葉がなんなのか、聞けなく

て…

初めてだよ。

授業が、こんなに長く、感じたのは…



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