接吻ーkissー
「ねえ、由良」

名前を呼んで立ち止まった私にあわせるように、由良も立ち止まった。

「少し、話さない?」

そう言った私に、由良は首を縦に振ってうなずいた。

小さな広場には街灯が1つだけあった。

僅かな明るさだったけど、広場を照らしていた。

広場の隅には、塗装のハゲたベンチが忘れ去られたように置いてあった。

私と由良は、そこに腰を下ろした。

2人分の体重が座ったそれは、ギシッと古い音を立てた。

「話って…もしかして、考えてくれたの?」

由良が聞いてきた。

さすが由良だと、私は思った。

でも話をする手間が省けたと、同時に思った。
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