接吻ーkissー
「けど、何で雇われのピアニストなんてやっているんですか?」

私が聞くと、
「菊地さんが雇われのままでいいって言うなら、それまででしょう。

実際世界へデビューしても、鳴かず飛ばずの結果になってるって言う人もいるくらいですから」

お兄さんは言った。

「菊地さん、ピアノすごくいいのにな…」

「璃音ちゃんもそう思う?」

そう聞いてきたお兄さんに、
「はい。

昨日聞いたんですけど、すごく素敵でした」

私は答えた。

「そうだよねー。

あ、もう準備できたみたい」

お兄さんに言われて視線を向けると、昨日と同じ光景がそこにあった。

「あ、スーツだ」
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