接吻ーkissー
待ち合わせ場所のバーに到着すると、ドアを開けた。

「おう、やっときたか」

カウンターに座っていた菊地さんが手をあげて、私を迎えてくれた。

今日はグレーのスーツに黒のシャツだった。

いつものオールバックの髪は、今日は下ろしている。

いつもと違う雰囲気に、私の心臓が少しだけドキッと鳴った。

菊地さん、こんな髪型になる時もあるんだ…。

そう思いながら、
「ごめんなさい、少し送れてしまいました」

菊地さんに歩み寄ると、謝った。

「いや、俺も今さっききたところだから気にすんな」

「は、はあ…」

今さっき、ねえ。
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