接吻ーkissー
「名前は?」

彼が聞いてきた。

な、名前?

「名無しなのはいつまでもかわいそうだろうと思って」

か、かわいそうって…。

別にかわいそうだと思っていないんですけど。

「田島璃音(タジマリオン)です」

何だかんだ言いながらも、自分の名前を名乗ってしまった。

私って、ホントにお人好しなんだから。

それで迷惑をかぶった数は、数え切れない。

「璃音か…。

いい名前だな。

音楽が好きって感じで」

彼が言ったので、
「はあ…」

私は返事をした。

まあ、音楽は好きと言えば好きだけど。
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