あやとり

男が優ちゃんのアパートの階段を駆け上がろうとした時、優ちゃんが階段に視線を向ける。

異様さに気付いて、玄関に戻り、ドアを閉めたように見えた。

(よかったぁ)

私が胸を撫で下ろした瞬間に、そのドアは男に力ずくで引っ張られていた。

男が中に入ろうとしている。

(優ちゃん!)

私は、走っていた。

怖くて、怖くて、泣きたいぐらいだったのに、優ちゃんのアパートに向かって、走っていたのだ。


< 134 / 212 >

この作品をシェア

pagetop