今宵は天使と輪舞曲を。

「別に何もないわ叔母様。わたしはただ、話し相手に付き合わされただけよ。彼とは何もないし、これからだって何も起こることはないわ。二度と、永遠によっ!!」

 ただでさえ悲しみに打ちひしがれているのに叔母の罵声を浴びせられてメレディスは怒りに震えた。


 誰も彼も、自分を利用する。
 いい加減、もううんざりだ。

 メレディスは叔母の罵声にも負けないくらい声を張り上げる。それから縫い合わせたキルトを体から剥がすと勢いよく立ち上がった。

「そんなことよりわたし、ご飯の支度をしなきゃ。今夜も社交界に参加するんでしょう? それまでに支度をしなきゃいけないの。わたしは忙しいのよ叔母様!」

「ま、まあ……そうなの……?」

 メレディスは叔母を睨み上げると、彼女はぱちくりと瞬きをした。あまりの剣幕に驚いたのか、ひとつ頷いた後、「だったら早く家の用事を済ませなさい」と付け加えるなり、そそくさと部屋を出て行った。

 メレディスは目を閉ざし、叔母が部屋から出て行く足音とドアが閉ざされる音を遠くの方で聞いた。


 息子たちに身を固めてほしいレディー・ブラフマンは、おそらく今夜開かれる社交パーティーに彼がやって来るだろうことは目に見えている。



 彼はきっと昨夜の口づけでメレディスの心を奪ったと自負していることだろう。そして次の段階に進もうと迫ってくるに違いない。すべては結婚の無理強いをしてくる母親を諦めさせるために!!


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