今宵は天使と輪舞曲を。

 メレディスがどんなに癇癪を起こしても彼女はけっして感情的にはならない。

 二歳も年下の彼女は辛抱強い。とてもできた淑女だ。慈悲に満ちたアンバーの目は陰りを見せ、メレディスを見つめている。キャロラインに少しばかりの罪悪感を覚えたメレディスは込み上げてくる怒りや悲しみを深いため息と一緒に吐き出した。


「わたし、利用されるのはもううんざりなの」

 言うなり、口の中に溜まった唾液をごくんと飲み込んだ。

 涙が出そうだ。目頭が熱くなる。
 昨夜から今朝にかけて散々泣いたはずなのに、また泣きたくなってくる。

「まあ! ラファエルが貴女を利用しようとしたの?」

 華奢な手がメレディスの手を掬い取り、優しく撫でる。
 信じられないと驚きの声が上がるものの、それでも彼女はメレディスの気持ちを察してくれている。そのまま静かに訊ねた。

「ええ。お母様から結婚を急かされるのを防ぐためにわたしを使おうとしているわ」

「それはたしか? だってラファエルは――」

女性が苦手(・・・・・)、でしょう?」

 キャロラインは苦手な女性のひとりであるメレディスを利用しようとするなんて考えられないと言いたいのだろう。

 たしかに、女性と結婚させられるのが嫌で女性とスキャンダルになるのを受け入れるなんてたしかに馬鹿げた策略だ。


「でもわたし。貴女のお母様と彼が話しているのをたまたま聞いてしまったのよ。きっと彼はわたしが落ちぶれた貴族だから平気なのよ」

 言ったそばから視界が揺れる。涙が込み上げてきた。


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