今宵は天使と輪舞曲を。

 両親に先立たれたばかりかデボネ一家に扱き使われ、壁に張りついている自分。
 おかしなことに、すべての元凶は、ここにいるラファエル・ブラフマンであるような気さえしてくる。


「結局のところ、わたしはブローチと同じ運命を辿るのよ」

「ブローチ?」

 メレディスは憤りをそのままラファエルにぶつけた。
 何も知らない彼は眉間に皺を寄せ、オウム返しに問いかけてくる。
 それがまた、メレディスの神経を逆撫でする。


「両親の形見よ!」
 数日前、エミリアに両親の形見であるブローチを売り飛ばされた。あれだけ用心深く叔母たちに見つからないよう隠していたのに、従姉のジョーンに見つけられてしまったこと。水を引っ被りながら泣き崩れた出来事を彼女は思い出していた。
 もちろん、それらの出来事は咄嗟に口をついて出てきたものだ。彼とブローチはまったく関係がない。そんなことは分かっている。

 それでも苛立ちを抑えきれないメレディスは冷たくあしらうとそそくさと別の壁に移動する。途中、背後から呆れたようなため息が聞こえたが、そんなのは無視だ。

 三拍子の明るい音楽は今の自分とはまったく対照的だ。それが余計、惨めに思えてくる。

 ようやくひとりになれたと思えば、今度は彼の妹、キャロラインがやって来た。


 もう! どうして放っておいてくれないの!?

 メレディスは灰色の目をぐるりと回し、首を左右に振った。

「メレディス? いったいどうしたの? ラファエルと何かあったの?」

 刺々しい態度を見せるメレディスに、キャロラインは眉根を寄せて心配そうに顔を覗き込んでくる。


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