今宵は天使と輪舞曲を。
「デボネ夫人方々の寝室はこちらです。ですが、ミス・トスカ。貴方様の寝室はもう少し奥にございます」
一度は二階中央の階段前にある大きくて広い部屋の一室に立ち止まったメイドは、エミリアたち親子を見据えたのち、メレディスを視界に入れた。
メイドの言葉を聞いたデボネ家の住人たちは顔を真っ赤にしていた。
「ちょっと! どうしてメレディスは一人部屋でわたしたちはこの部屋ひとつだけなの?」
空かさず不満の異を唱えたのは長女のジョーンだ。しかしこの抗議にしてもメイドは淡々と述べるだけに留まった。
彼女の表情は何も窺い知れないが、はしばみ色の目は冷ややかで、明らかに異を唱えるデボネ家たちを見下していた。
「モーリス様の言い付けでございますれば。ご異存はどうぞ我が主におっしゃってください」
メイドは抑揚もなくぴしゃりと言ってのけると、言葉を続けた。
「昼食の用意が調いましたら後にお迎えに参ります。それまではどうぞごゆっくりお過ごしください」
言い終えるやいなや、彼女は一礼した。彼女はとても勇敢だ。顔を真っ赤にしたまま後ろ手にメイドを罵るジョーンだが、それでも彼女は無言のまま歩きはじめた。彼女の毅然とした態度は主人が招き入れたいかなる客人でも自分が気に入らなければ従わないという強い信念を感じた。メレディスは小気味のよい気分だった。それと同時に、彼女はけっして自分のことも気に入っていないだろうと思った。