今宵は天使と輪舞曲を。

 他人の財産で飲み食いや挙げ句の果てにはドレスまで買い込んでいる事実を棚に上げ、彼女たちは自分がしていることよりも姪のメレディスがしていることの方が恐ろしく凶悪なことだと言ってのける。

 メレディスは苛立ちを感じる一方で、負い目も感じていた。
 なにせ自分はブラフマン家の次男であるラファエルと昼日中を過ごした。それも一度や二度ではなく、今日も会うと約束してしまった負い目がある。今日までのこの三日間、彼女たちの愚行についてこの場で言い返せば目を付けられてしまう。そうなれば最後ラファエルとは会えなくなる。下手な口答えはできない。どう答えるべきかと考えていると、キャロラインが口を開いた。

「昨夜はわたしが一緒に食事をしようとメレディスを誘ったの」

 膝上にあるナプキンを見つめるメレディスだったが、キャロラインの言葉に顔を上げた。ここがブラフマン家ではなくデボネ家なら、間違いなく自分の味方はいない。いつも孤独で三人と敵対しなければならなかった。ところが今はキャロラインがいて、どうやら彼女は自分と友達になりたがってくれている。それがどんなに心強く、どんなに嬉しい事か。メレディスは心優しいキャロラインの反応に胸を打たれた。気持ちが昂ぶるあまり目頭が熱くなる。

「私たちの教育方針ですわ。自我はブラフマン家を繁栄させるためにはなくてはならないものです。ですから、子供たちには節度を守り、さらには個人を尊重して動くことを教えております」



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