今宵は天使と輪舞曲を。

§ 02***悲恋。




 ラファエルと次の逢瀬を約束して一日が過ぎ、二日が経った。
 けれどもなかなかその日は訪れなかった。

 "また今度"
 別れ際にそう告げた彼だが、よくよく考えてみればその言葉は当たり障りのない別れの挨拶に使われることが多い。

 そう考え直した時、そこではじめて、『遊ばれているのではないか』と疑っていたヘルミナの言葉が頭を過ぎった。

 もし、彼女の言うとおり、ラファエルは遊びのつもりで近づいたのなら――……。

 そう考え出した時、メレディスの胸が痛みを訴えはじめる。心臓の鼓動は速くなり、呼吸がうまくできない。

 今のメレディスにとってはエミリアや義姉と食事のたびに顔を合わせ、繰り出される嫌味の数々なんてどうでもいいことだ。それよりもずっと苦痛なのは、ラファエルと会えない日が続くこと。そしてメレディスの次なる心配事は、彼が暇つぶしのために自分と接触したのではないかという疑念だった。

 メレディスの脳内には臆病な考えが頭をもたげてくる。そしてラファエルからの連絡が途絶えてから三日目が過ぎた今日、メレディスはもう居ても立ってもいられなくなっていた。
 彼からの連絡を待てるほどの余裕はすっかり消えてなくなっていたのだ。それでもどうにかしてメレディスは失いかけている平常心を取り戻すためにキャロラインと一緒に書斎にいた。彼女はとても本が好きで、中でも庶民の出の主人公が最後に一国の王子様と結ばれる、ハッピーエンドが大好きだった。

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