今宵は天使と輪舞曲を。

 ありとあらゆる炭水化物の誘惑から必死に逃れた。けれどもジョーンよりもずっとぽっちゃりしている彼女の体型ではたったの三週間でサイズダウンは難しすぎた。

 それでも意地の悪い叔母はヘルミナの体型を個性とは思わず、頑なに拒否し、宣言したとおりジョーンと同じサイズのコルセットを着させたのだ。おかげで鋼の鎧を(実際にはヘルミナが着けているコルセットは鋼ではないが、おそらく彼女はそう思っているに違いない。)身にまとった彼女の体を包み込む桃色のドレスは今にもはち切れんばかりだった。

 結果はどうであれ、ジョーンと同じサイズのコルセットを着せることに満足した叔母は満面の笑みを浮かべている。愚かにも彼女はヘルミナの体がほっそりしていると思い込んでいる。そして華奢な体つきをした彼女はあらゆる紳士を釘付けにできると盲目的に信じていた。

 可哀相なヘルミナは息もろくにできない様子だ。時間が経つにつれてますます顔色が青くなっている……。



 ――とはいえ、普段から使用人役をあてがわれているメレディスよりも彼女たちの方がずっと綺麗だった。
 窓に写る自分の姿を横目でちらりと確認したメレディスは三人に悟られないよう静かに落胆のため息を漏らした。

 純白のドレスを着た痩せ細った体は見窄らしく、荒れ放題の唇。栄養不足で不健全な肌はワンサイズ小さめのコルセットで苦しんでいるヘルミナよりも青白く、生気が無い。


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