今宵は天使と輪舞曲を。
目の中に飛び込んでくる光に慣れず、そればかりか布が裂ける音が聞こえた。
それに胸元にひんやりとした外気に当たっている気がする。
自分はいったいどうなってしまうのだろう。自分の身に起きている危険が何なのかがわからなくて、それが余計に恐怖心を煽ってくる。
「何をしてやがる! さっさと終わらせろ!」
背後にいた男が低い声で諫める。
「けどさ、生娘なんて久しぶりじゃねぇか」
内輪揉めをするのならとメレディスが暴れてみても大の男二人が相手では無駄だった。
「おい! いい加減にしろ!!」
仲間の忠告を聞かず、男はメレディスの胸の膨らみを包んだ。男は興奮しているのか、荒い吐息がメレディスの肌を触れる。言い知れない嫌悪感がメレディスを襲う。我を失い、頭が真っ白になった。
胃の辺りがムカムカする。ラファエル以外の男性に触れられることを体が拒絶する。
「依頼を先に済ませろ! まずは女の顔に傷をつけてからだ! それからたっぷり愉しめばいい」
「……わかったよ」
同業者の忠告をようやく聞き入れる気になったのだろう。素肌から男の生温かい吐息が離れた。
「さあ、さっさと終わらせるぞ」
背後にいる男によってメレディスの顎が上向きに固定される。メレディスは声にならない声を上げ、必死に抵抗を図る。どうにか逃げる術はないかと必死に頭を回転させた。
視界の端に刃物が光っている。視界が悪い分、感覚はより鋭くなっている。
気のせいだろうか。何かがこちらにやって向かって来ているようだ。