今宵は天使と輪舞曲を。

 彼が直接自分に触れているわけでもない。
 けれどもそれだけでも彼を意識してしまうから困る。

 うなじにある後れ毛がちりちりする。おかげでメレディスは誰にも気づかれないよう、ゆっくりと呼吸を繰り返すことしかできない。
 高鳴る心臓を落ち着かせようと目を閉じるのだが、神経が研ぎ澄まされてしまい、逆効果だった。どうしてもラファエルの呼吸する息遣いや体温が伝わってきてしまう。

 ――ああ、わたしはどうすればいいの?

 膝の上に置いている手は握り締めているおかげでほんの少し湿り気を帯びている。これでは違う意味合いの拷問ではないか。

「メレディス、遅れてきた上になんですか事件まで起こして! 皆様にお謝りなさいな!」
 おかしな雰囲気のその中で、口を開いたのはエミリアだった。彼女の唇は醜く歪んでいる。ジョーンもものすごい形相でメレディスを睨んでいた。

 ヘルミナは――何だろう。ただでさえまん丸の目をこれでもかと言わんばかりに見開き、驚いたようにこちらを見ていた。いったい何に驚いているのかと考えたが、彼女の視線の先を確認すれば一目瞭然だ。彼女はラファエルが自分の側に寄り添うようにして立っていることに驚愕しているのだ。

 たしかに、ここにはキャロラインやグランだけではなくブラフマン夫妻もいる。これでは両親にさえ自分との仲を見せつけるようではないか。ラファエルが自分に寄り添うなんてどうかしている。メレディスを火遊びの相手にしては明らかに態度がおかしい。


< 280 / 440 >

この作品をシェア

pagetop