今宵は天使と輪舞曲を。

 ――彼女がいなければ、自分はとっくに命を堕としていただろう。

「メレディス、君たちが……」
(世間の誰が何と言おうと、自分にとって彼女たちは間違いなく幸運の女神だ!)

 メレディスとクイーンという存在がこんなにも心強いとは――。

 胸から熱いものが込み上げてくるのが分かる。
 腕の中で泣きじゃくる女性の華奢な体のいったいどこに、大の男ひとりを助けるほどの力があったのだろうか。
 そう思うと同時に、メレディスの存在がラファエルの中でさらに大きく膨らんでいった。

 ――愛おしい。
 今まで何度、彼女に対してこの感情を抱いただろうか。
 ラファエルはたまらず彼女の旋毛にキスを落とした。

「メレディス、愛しい君。泣かないでほしい」
 思ったよりもずっと優しい声が口から飛び出した。

 自分は今まで、女性をこれほど力強く感じたことはあっただろうか。
 況してや守るばかりの存在だと思っていた女性に、逆に守られる立場になるのは露ほどにも考えていなかった。
 ラファエルは腕の中にいるこの女性こそが自分の宿縁なのだと強く理解し、そして彼女の体温を感じられる事が嬉しくて堪らなかった。

 これまで神という存在を強く意識した事はなかったが、今は命があることに強く感謝した。

「ラファエル!」

 しばらくの間、泣きじゃくるメレディスを抱きしめていると、兄に続いて父、モーリスと母、レニアも姿を現した。
 彼らも安堵のため息をつき、息子の無事な姿を心の底から喜んだ。



《宿縁・完》
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