今宵は天使と輪舞曲を。
どうして彼はそんなに嬉しそうにしているのだろう。さしずめ、忠犬が主人を見つけてはしゃいでいるように見える。
嫌な予感がする。
何が起きているのか分からないまま、ヘルミナは呆気に取られていた。
「ちょっと、急かさないで。わたしドレスなのよ!?」
我が物顔でヘルミナを振り回す彼はいったい何様のつもりなのだろう。たかだか一夜、ほんの一回ベッドを共にしただけなのに、彼はすっかり恋人気分でいる。少し煽てれば調子に乗る。これだから年下は苦手なのだ。不機嫌になるヘルミナは馬丁に導かれるまま進めば、そこにはに慣れた馬車が止まっていた。
その光景を見た瞬間、気持ちが一気に曇っていくのを感じた。
例の馬車から姿を現したのはブラフマン家の家令だ。さらに彼がドアを開けると、モーリスとレニアが降りた。続いて開いた反対側のドアはグランが――もうひとつ奥のドアが開いたのを見た時、ヘルミナは平衡感覚を失い、血の気が引くのを感じた。
メレディスとラファエルが何事も無かったかのように姿を現したからだ。二人は肩を並べ、地面に降り立った。
否、事はより悪化している。二人の絆がより強くなっているように思えたからだ。
ヘルミナの計画は破れた。ショックのあまり頽れそうになるのを馬丁が支えた。
「ぼくのボスをこんなに心配してくれて嬉しいよ」
何も知らない彼は喜びのあまり力が抜けたのだと勘違いした。彼は崩れかけるヘルミナの腰を支え、頭のてっぺんに喜びの口づけを落とした。