大江戸妖怪物語
「じゃあ俺は捜査に戻るとする。今夜までにこの件は片をつけとかないと間に合わん」
「あ、じゃあ忙しいところ申し訳ないけれど、事件現場を見せてくれないかしら」
「いやいや、雪華!帰ろう!」
僕は死体が見たくなかった。その一心で雪華を帰らそうとする。
「まあ、雪華の頼みとあらば見せてあげよう」
「いやいや、ほんといいです!いいですから!」
「神門、行くぞ」
「い、や、だああああ!」
雪華に引きづられるように黄色いテープの境界線の向こうへと連れてかれる。
そして見えてきたのはブルーシートに覆われたナニか・・・。
(内心晴朗のがちょっとトラウマなんだよね・・・)
そして規制テープを超えてしまって意識してしまったのか、少し腐乱した臭いがする・・・。多分だけど。
「ここが現場だ」
不動岡さんに連れて行かれた場所は鬱蒼とした小道だった。確かに人通りも少ない。ゴミは綺麗に掃除が完了していた。・・・が、おそらく、あのブルーシートの中には・・・。
「さて、では仏さんを拝見しましょうか」
雪華は何食わぬ顔でブルーシートへ近づいて、そして一気に捲った。
「ほう・・・」
雪華は死体に横に座り込んで顎に手を置いた。
「綺麗に抉られている。とても綺麗に・・・」
「やめて説明しないで想像させないでお願いお願い」
僕は耳を塞いでいる。想像したくもないよ・・・。
「ん?なんだこれは?」
雪華は死体の近くの砂を掘った。
「・・・目玉だ」
「ぎゃーーーーっす!!」
僕は腰を抜かした。砂に埋まったそれはとても不気味だ。
「よく発見してくれた雪華!・・・おや?」
それを見た不動岡さんは首を傾げた。
「目玉の色が・・・青・・・?」
「それがどうかしたのか?」
「彼女の目の色は・・・黒色なんだ・・・」
「え」
「え?」
僕と雪華の声がハモる。
「それどういうこと?彼女、オッドアイとかじゃないわよね?」
「いや、両目とも黒だ。写真も確認している」
「・・・てことは、別人の目玉ってこと?」
僕は恐る恐る聞いてみる。不動岡さんは首を縦に振る。
「江戸で起こったこの手の事件は3件。調べたとおりかもしれない。もしかしたらこの殺人鬼、江戸以外で殺人をしている可能性が出てきた。事前に根回ししといてよかった・・・」
不動岡さんは腕組みをしながら呟く。
「根回しって何ですか?」
「ああ、もしかしたら他所で事件を起こしている可能性があったから、日本全国にそのような事件があったか情報を集めていたんだ。事件とは限らず、変死体でもいい」
「すみませーん!不動岡さーん!」
不動岡さんの部下らしき人が髪を持って駆けてきた。
「江戸以外でのこの手の変死体が発見されていたそうです。二週間ほど前、江戸に入る関所の近くで!」
「でかした!写真は?」
「それが住んでいたところが丹波だそうで。写真と名前は今日の夜くらいにでも江戸に着くそうです!」
「はぁ。夜か・・・。また仕事が・・・」
不動岡さんは頭を抑えた。
「じゃあ雪華、そして神門くん。写真と名前、住所が届き次第君たちに渡す。まあお互いに大江戸花火大会に行くようだから、おそらく会えるだろう。俺たちはまぁ・・・互いに目立つからな」
「そうね。わかりしだいこのブレスレッドにでも伝えて」
「了解した」
「じゃあ、私たちはこれで失礼するわ。行きましょ、神門」
「う、うん」
僕は手を引かれて現場を去った。