大江戸妖怪物語
そこには十数個の家が並ぶ小さな集落があった。子供が走り回っている。
やはり山の中の集落とあって、藁葺きの屋根が情緒を醸し出している。
「ちなみに俺の家はここだから」
源一さんはひとつの家を指差した。
「荷物を置いて、村長のところに挨拶しに行くか」
源一さんの家に入る。家の中は無駄なものは何一つない、シンプルな部屋だった。真ん中に囲炉裏が配置されている。
荷物を置き、村長の家へと向かう。村長の家は他の家よりも一回り大きく、高床式でできていた。階段を一段一段上がり、戸をノックする。
「村長ー?源一です。ちょっと会わせたい人がおりまして」
扉が開いた。簡素な作りの扉は、今にも壊れそうなボロさだった。
中に入ると一人の女性が座布団の上に腰掛けていた。四十代前半だろうか。村長というには若い気がした。
「・・・源一、そのものたちは何ものじゃ?」
「へい!この村の救世主ってやつです!」
くすんだ紫の髪に紫紺の瞳。淡い色のグリス。四十代前半といっても美しい。美魔女とでもいうのだろうか。幾何学模様の布をサリーのように巻いていた。
「・・・私はこの村の村長、夕場美藤じゃ。村長といっても、ほとんど名ばかりじゃがの」
ニヤリと笑った口元。妖艶さが漂う。セクシーな熟女がそこにいた。←失礼
「名ばかりじゃねえですよ。村長がいなきゃ、村が潰れちまうところでしたしね!」
源一さんが話す。
「村長がこの村に来なければ、村は・・・今頃無くなってたはずです。うう、村長!ありがてえ!」
源一さんはうぐぐと泣き出してしまった。
「落ち着け源一。座れ。その者たちもこちらへ」
雪華は囲炉裏をはさんだ村長の向かいの席。僕は村長の左側、源一さんは右側へ座った。侍女たちが大きな扇子で美藤さんを仰いでいる。
「名前を聞こうか・・・。まずはお前から」
指を差されたのは僕だった。
「ええと、紅蓮神門です!江戸で刀屋を営んでおります!よろしくお願いします!」
「私は雪華と申します。こいつの家で居候中です。ところで先ほどのお話、気になったところがありまして。村長がこの村を救ったって・・・どんなことがあったんですか?」
源一さんと村長は顔を見合わせた。
「・・・話したそうな顔をしておるわ、源一」
「へい!話させてくだせえ!村長の武勇伝を!」
源一さんは私たちに向き合い、話し始めた。
「昔、こんなことがあってだな・・・」
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