大江戸妖怪物語
そこからおじさんは山姥伝説について話してくれた。
ずっと前から山に山姥が住み着いていること。三ヶ月に一回、生贄を捧げなくてはならないこと。それがずっと続いていること。
「ほんと山姥には迷惑してる。生贄のせいで人口が減って、過疎化も進んできやがった。俺があんたらみたいに妖力を持ってたらなあ。真っ先に山姥を倒しに行くのにな・・・」
おじさんは遠い目をして語る。
「そういや、名前を聞いていなかったな。俺の名前は篠塚源一っていうんだ。あんたらは何ていうんだい?」
「僕は紅蓮神門です。正真正銘の人間です」
「私は雪華。純血の雪女よ」
「神門くんに、雪華ちゃんか。二人の活躍、期待してるぞ。村に希望の光が見えた!よーし!今日は家に帰ったら祝杯だ、ガハハ!」
ガタイのいい体を揺らしながら源一さんは大声を上げて笑った。
「えっと、神門くんに雪華ちゃん。もしかして二人は宿無しかい?よければ、俺の家に泊まらねえかい?」
「ぜひそうさせてください。この男と一緒に寝たくないので」
雪華が指さしたのは僕だった。
「あれ?二人はカップルじゃないのかい?」
「えー?そんな風に見えま「やめてくださいよ。吐き気がします」
雪華は僕の言葉をピシャリと遮った。
「アベックじゃないのかい。ガハハ。あと一時間くらい山道を歩けば俺の村だ。行ったら、村長に事情を話そう。きっと滞在を見て目てくれるさ。村長は山姥が大嫌いだからさ」
小一時間ほど源一さんと話しながら道を歩いた。
鬱蒼とした道を歩く。
所々竹が倒れて道が塞がっていたが、源一さんの愛用の鉈で切っていった。
「ここが、俺たちの村さ」
源一さんが指を差した。