大江戸妖怪物語

「この料理には、毒が入っている・・・」

「ど、毒ぅ?!」

「毒だとぉ?!」

僕と源一さんが驚いて声をあげた。
慌ててその料理から距離を置く。距離を置いたからってどうってことないが、毒料理には近づきたくない。

「先ほどお前が食おうとしたキノコ・・・。あれはベニナギナタタケではなく、カエンタケというキノコだ」

「か、カエンタケ?」

なんか随分とヤバそうな名前のキノコだ。

「通称、殺人キノコ」

「ヤバいどころじゃねえ!!」

ま、まさか目の前にそんな毒物があるとは・・・!

「一口食っただけで死ぬぞ」

「へ、へぇ・・・こんなのが・・・」

僕は恐る恐るそれに手を伸ばして触ろうとした。

「触るな!」

「あぶねッ!!!!」

キノコを触ろうとした右手に向かい、雪華は刀を振り下ろした。

「触れるだけで皮膚が爛れ、しかもその汁を触るだけでも大変なことになる」

「だからといって右手を切り落とそうとしないでよ!!爛れるどころか、右手ごと無くなるところだったわッ!!」

「あ、あの・・・」

侍女が恐る恐る口を開いた。

「わ、私ッ・・・、ほんとに知らなくて・・・。ほんとに、ほんとに・・・お二人を殺そうなどとは思っていません!!」

侍女は半泣きになりながら叫んだ。
するとずっと口を閉ざしていた美藤さんが話し始めた。

「そこの侍女、このキノコは食料庫から持ってきたのか?」

「は、はい!先ほど食料庫から取ってきて・・・」

美藤さんは胸元から金属を取り出した。それは南京錠だった。

「もしやと思ったのだが、今日の早朝に食料庫の南京錠が何者かによって破壊されていた」

美藤さんは南京錠を机の上に投げ捨てた。ガチャリとうるさい音を立てて南京錠は落ちた。

「この南京錠は並大抵の力では壊せない。恐らく山姥の仕業だろう」

「や、山姥?!」

は、早い早すぎる。もう僕たちが山姥退治をしようとしてることがバレてる・・・?

「見てみろ、この錠を。食料庫の食べ物だけは盗まれないようにするために、丈夫な構造になっている。しかも、これは切られたのではない。引きちぎられている」

「・・・こんな金属を、引きちぎる力」

確かに、よく目にする南京錠よりも一回り大きく、重たい。しかし、ロックするための輪の部分は、簡単に引きちぎられていた。

「何も盗まれていなかったから公に言わなかったが・・・まさか毒物にすり替えられているとは・・・」

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