大江戸妖怪物語
「・・・さてと、お主ら。もう今日は帰るがよい。ゆっくりと休むがよい。・・・山姥を倒すためにな」
僕たちは源一さんの家に戻り作戦を練った。
「山姥怖すぎるだろ・・・。だって、あの南京錠、すっげえ力で捻りちぎられてたし!・・・はぁ、怖い・・・」
僕は胡座をかいて溜息をついた。
「そんなこというなよ、神門くん。期待してるんだから・・・。村中の希望なんだから」
源一さんが優しく言う。
「・・・そういえば・・・。源一さんって奥さんいないんですか・・・?だって結構いい年だし・・・」
僕がそれを聞くと源一さんは暗い顔になった。
「あれ、聞いちゃ・・・ヤバかったですか・・・?」
「神門・・・。お前というやつは・・・」
「あ、いや、いいんだ。俺ももう吹っ切れてるからさぁ」
茶々を撫でながら源一さんは続ける。
「・・・聞きたいかい?」
悲しげに微笑む源一さん。今までにこんな表情の源一さんは見たことがなかった。僕は静かにうなづいた。
「じゃあ話そうか。まあ、二十年も前の話になるがなァ・・・」
―――――
―――
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――二十年前――
ジメジメした季節。紫陽花の上に蝸牛。いかにも梅雨らしい天候だった。
源一は手ぬぐいで顔の汗を拭いながら鍬を振り降ろす。
「あ~・・・あっぢぃ・・・」
パタパタを服をばたつかせる。
「源一さん!お弁当持ってきました!よかったら食べませんか?」
お弁当片手に駆けてきた女性。
「麻子!そうだな、飯にしよう!」
畑の一角に腰を下ろし、風呂敷を解いた。
「いただきます」
「いただきまーす!」
二人でお結びを頬張る。
「やっぱり、麻子の作る飯は格別だ。村一番だ」
「まあ、まあ。失礼しちゃうわ」
近所のおばさんがニヤニヤしながらちょっかいをかけてくる。
「相変わらずラブラブねぇ」
おばさんのその言葉に、二人は顔を見合わせ微笑んだ。
「籍を入れるのはいつかしら?おばさん、赤飯炊いちゃおっか?」
「籍を入れるのは明日です。明日の昼頃に」
「まあまあ!いいわね!新婚さんって!あら?もしかして私、邪魔かしら?ごめんあそばせ~ホホホホ~~!!」
高笑いをしながらおばさんは去っていった。
「やっぱり、この村は楽しいわ。だから私、この村が好き」
麻子はお結びを食べながらフッと笑った。