大江戸妖怪物語

「・・・さてと、お主ら。もう今日は帰るがよい。ゆっくりと休むがよい。・・・山姥を倒すためにな」

僕たちは源一さんの家に戻り作戦を練った。

「山姥怖すぎるだろ・・・。だって、あの南京錠、すっげえ力で捻りちぎられてたし!・・・はぁ、怖い・・・」

僕は胡座をかいて溜息をついた。

「そんなこというなよ、神門くん。期待してるんだから・・・。村中の希望なんだから」

源一さんが優しく言う。

「・・・そういえば・・・。源一さんって奥さんいないんですか・・・?だって結構いい年だし・・・」

僕がそれを聞くと源一さんは暗い顔になった。

「あれ、聞いちゃ・・・ヤバかったですか・・・?」

「神門・・・。お前というやつは・・・」

「あ、いや、いいんだ。俺ももう吹っ切れてるからさぁ」

茶々を撫でながら源一さんは続ける。

「・・・聞きたいかい?」

悲しげに微笑む源一さん。今までにこんな表情の源一さんは見たことがなかった。僕は静かにうなづいた。


「じゃあ話そうか。まあ、二十年も前の話になるがなァ・・・」


―――――

―――





――二十年前――

ジメジメした季節。紫陽花の上に蝸牛。いかにも梅雨らしい天候だった。

源一は手ぬぐいで顔の汗を拭いながら鍬を振り降ろす。

「あ~・・・あっぢぃ・・・」

パタパタを服をばたつかせる。

「源一さん!お弁当持ってきました!よかったら食べませんか?」

お弁当片手に駆けてきた女性。

「麻子!そうだな、飯にしよう!」

畑の一角に腰を下ろし、風呂敷を解いた。

「いただきます」

「いただきまーす!」

二人でお結びを頬張る。

「やっぱり、麻子の作る飯は格別だ。村一番だ」

「まあ、まあ。失礼しちゃうわ」

近所のおばさんがニヤニヤしながらちょっかいをかけてくる。

「相変わらずラブラブねぇ」

おばさんのその言葉に、二人は顔を見合わせ微笑んだ。

「籍を入れるのはいつかしら?おばさん、赤飯炊いちゃおっか?」

「籍を入れるのは明日です。明日の昼頃に」

「まあまあ!いいわね!新婚さんって!あら?もしかして私、邪魔かしら?ごめんあそばせ~ホホホホ~~!!」

高笑いをしながらおばさんは去っていった。

「やっぱり、この村は楽しいわ。だから私、この村が好き」

麻子はお結びを食べながらフッと笑った。
< 184 / 328 >

この作品をシェア

pagetop