大江戸妖怪物語
その後も建物を潜り抜け、ついに村の出口まで行ったところであった。
「・・・戻れ!」
源一は慌てて来た道を引き返す。
村の出口にいたのは麻子の父親だった。しかし、父親は二人の存在に気が付いてないようであった。源一の村に続く道はこの一本だけ。そこをふさがれてしまってはこの村から出ることができない。さすが学力重視の父親。ちゃんと知能がある。源一は少し感心した。父親は道行く女の顔を凝視していた。
「これじゃ、バレちまう・・・」
近くの石に座り、顔の汗をぬぐった。
「ど、どうしましょう・・・」
直進してもダメ、村には必死に探し回る母親。袋の鼠というべきか。しかし、ここまで来てしまった以上、戻ることはできない。『愛する彼』と手紙に書いてきてしまった以上、源一自身、父親の前を通ることができない。
「こうなったら・・・!」
源一は立ち上がった。
「山だ・・・山から行くしかない・・・!」
そう、山から行けばいいのだ。父親が塞ぐ道の両脇には大きな山があった。少し険しいが、それしか方法がなかった。
「俺だったら行けるが・・・麻子は?大丈夫か?」
麻子の返事は早かった。
「大丈夫。行きます」
そして山に入る。山はとても険しく、所々斜面がきつい部分もあった。
「きゃっ!」
「麻子!」
足を滑らせた麻子の腕を即座に掴む。
「あ、ありがとうございます・・・!」
「もう少しだ、頑張ろう!」
「はい!」
そして山を少し行ったところから、正規の道へ戻った。父親がいたところはもう見えなかった。
「・・・やった、やったぞ!!」
源一と麻子は手を繋いで喜んだ。
「じゃあ・・・俺の村へ行こうか!!」
「はい!!」
源一と麻子は手を繋ぎ、源一の村へと進んでいった。