大江戸妖怪物語
それから二人の同棲生活が始まった。
麻子は初めに両親について語り始めた。
「もう、両親とは決別します。だから、私の両親について聞いていただけませんか」
静かに麻子は話し始めた。
「私の父と母は、学力重視ということは知っていますよね。小さい頃からエリート的教育を受けてきたんです。学力のない者は愚者。それだけだ、と。だから、私もエリート的教育を受けさせられました。でも、私自身、疑問があったのです。本当に学力だけでよいのかと。しかし、エリート的教育を推進する両親はヒートアップしていきました」
麻子はうつむきながら話を続ける。
「ついには、人を軽蔑するに至ったのです。自分より田舎に住んでいるものは愚者。何につけても自分の下をつくり始めたのです。上より、下を。もちろん、村の人々には嫌われるに決まっていますよね。人々を馬鹿にしているようなものなのですから」
・・・
しかし、それからも彼女の両親の呪縛から逃れることができなかった。彼女の両親は何かしらの方法を使い、源一の家の住所を探しだし、大量の手紙を送りつけてきた。それはずっとであった。
「明日、結婚するのにまだ両親から離れられないなんて憂鬱です」
「麻子、あまり病むことはない。俺たちは俺たちの生活をするんだから」
そう、このときはこの幸せが永遠に続くと思っていた。このときまでは・・・。
その日の夜、源一と麻子が寝ていた時であった。
「源一さん・・・」
「どうした、麻子」
「実は畑に忘れ物してきちゃったです。今から取りに行ってきますね」
「明日でもよくないか?」
「紙なんです。明日の朝は雨が降るといわれてるので、取りに行かないと・・・」
「俺が行ってこようか?」
「いえいえ、私が行きます」
そういって麻子は玄関を出た。
源一は畑仕事で疲れていたため、麻子が戻るまで起きていようとしたがついウトウト眠ってしまったのである。