大江戸妖怪物語
「・・・・・・っていうのが俺の過去ってわけだ」
一通り話が終わると源一さんは溜息をついた。
「悪いな。こんな重い話をしちまって」
「いえいえ、そんな・・・・・・」
「でも二十年も前のことだ。吹っ切れてるよ。・・・ただ」
「ただ?」
「麻子以外の女に好意を持てないんだ。なんなんだろうな、心の奥で麻子のことを気にしているのかもしれない。なんどかお見合いもしたがこのザマさ」
ふと横を見ると雪華が刀を研いでいた。
「・・・何してんの雪華」
「その両親とやらを斬ってくる」
「やめてぇ!絶対やっちゃダメだからね?!?!」
「もう、いい年だから生きているかどうかもわからんな。ただ、山姥は絶対生きている」
源一さんは腕組みをしながら言った。眉間にしわが寄っている。
「山姥が出没する村で、夜に彼女一人で出かけるのを許した俺も悪い。だが、・・・山姥だけは許せない」
「源一さん・・・」
「だから、本当に。お前らに期待している。頑張れよ」
源一さんはそう言って笑った。
「・・・シッ・・・」
雪華がいきなり口を閉じた。
「・・・?どしたの?」
「・・・家の裏から物音がする・・・」
「家の裏・・・?そこには麻子の墓しかないが・・・」
「麻子さんの墓って、家の裏にあるんですか?」
「いやぁ・・・。実際の墓はもっと遠いところにあるんだ。ほら、両親がうるさかったから。だから、家の裏にあるのは代わりの墓碑なんだが・・・」
源一さんは立ち上がり、戸を開けた。
「泥棒かもしれん・・・。見てくる」
「私たちも行きます。・・・最悪、山姥かもしれないので」
僕たちは家の外に出る。僕は手のひらに火をともし、進んだ。家の裏になにかいるのだろうか。山姥かもしれない。僕は右手で太刀を握る。
「・・・行くぞ!」
源一さんの掛け声で家の裏を見た。するとそこには怪しげな動きをする黒いものがひとつ。
「や、山姥ッ?!」
すっかりへっぴり腰になっている僕の尻を雪華は蹴とばした。
僕は勢いよくコケて、その黒いものの目の前まで吹っ飛んだ。
「そこにいるの誰だ?!」
源一さんは斧を持って黒い影に近づく。ゆ、勇気がある・・・。
すっころんでる僕の手から明かりが消えてしまったため、慌てて再度火を灯した。