大江戸妖怪物語
「ヒっ!!す、すみません、すみません!!!」
そこにいたのは美藤さんの侍女だった。先ほど毒入り料理を運んできた彼女である。
「なにやってんだ?こんな夜遅くに」
相手が山姥ではなかったため、緊張が緩和した。
「す、すみません。ちょっと、夜の空気を吸いたくて・・・」
「危ないぞ。山姥に襲われるかもしれん」
「は、はい!ほんとに、すみません・・・」
侍女はあたふたした様子であとずさった。
「そういえば、あなた名前なんて言うのかしら。ちょっと教えてくれない?」
「私ですか・・・?」
侍女は少し首を傾げたが、すぐに答えた。
「私の名前は亜紗子と申します」
「亜紗子さんね。覚えたわ、ありがとう。すぐに帰ったほうがいいわ。あなたみたいな子は、山姥のターゲットになっちゃうから」
「そ、そうですね!すぐ帰ります。失礼します」
「お気をつけて~」
僕は亜紗子さんに手を振った。亜紗子さんは服の中に何かを隠し、その場を後にした。
「・・・?」
そして亜紗子さんがいたところに何か落ちている。
「なんだ?これ・・・」
「ふむ、水仙のようだな」
水仙の花がひとつ、落ちていた。黄色い可憐な水仙は、生き生きとしていた。
雪華はそれを持ったままじっと眺めていた。
「うむ、可憐な花じゃ」
「水仙か・・・。ここら辺じゃ見ない花だな」
源一さんはその花を覗き込んでいた。
「・・・氷化」
雪華がそう呟く。すると、水仙は凍ってしまった。
「可憐なものは好きじゃ。こうしてとっておこう」
「冷凍保存・・・?」
「大丈夫だ。割れないようになっているからな。永久的にこの美しさは持続される」
恍惚の表情で水仙を見つめる雪華に、垣間見える大人の色気。なんやかんやで雪華は二十歳なのだ。つまり僕とも結婚できる年齢・・・って、いやいや、何を考えているんだ僕は。
「何を見ている」
「べ、別に」
凍った水仙を見つめ、懐にしまった。
「ま、ほんとに山姥じゃなくてよかったな。さて、帰るぞ」
僕らは家に戻った。そして、僕らはそのまま寝た。