大江戸妖怪物語
―――――――――
―――
「あー・・・・・・死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ねええええぇぇぇ・・・!」
爪の長い女はその長い爪を噛んだ。
「皆、死ね。死んじゃえばいいのに。それじゃあおいしく、いただきます」
その爪は人間の首にささった。
――――――
「山姥だ!山姥の仕業だぞ!!」
その声が聞こえてきたのは朝だった。外は騒がしく、人が大勢集まっているようだった。
(山姥・・・?)
雪華もその声に気づいたらしく、すぐに家を飛び出した。
すると、村の端に人だかり。
その人垣を分け入ると、誰か倒れていた。
死んでいたのは美藤さんの侍女の一人だった。
「恵津子!恵津子!!!」
その死体を揺らすのは亜紗子。手を血まみれにして涙をボロボロと流していた。
「恵津子・・・なんでこんな・・・ッ!!」
「亜紗子さん、これは一体・・・・・・?」
「山姥よ!!」
泣きながら亜紗子さんは言った。
「今朝、給仕をしようと思って・・・でも、私と彼女は一緒に料理をする担当になっていて・・・。でも、時間になっても見つからなくて・・・・・・そしたら、そしたらッ・・・!!!!」
血まみれの侍女の体には数匹の蠅が音を慣らし飛び回っていた。その光景を見て、強烈に襲いくる吐き気を抑えた。死体を見ながら僕は、僕に止まった一匹の蠅を払いのけながら亜紗子さんに近づいた。
「あの、亜紗子さん・・・。落ち着いて・・・」
「これが落ち着いていられる?!仲間が山姥に殺されて!!」
亜紗子さんは猛犬の如く噛みつかんとばかりに僕に詰め寄った。
「・・・ごめんなさい」
我に返ったように亜紗子は下を向いた。
「あなたに怒ってもしょうがないわ。ごめんなさい」
亜紗子さんは座りこんで血まみれの手で頭を抱えた。
「・・・とにかく、彼女の遺体をここに置いておけない。別の場所に移そうか」
僕は自分でも驚くくらい冷静な判断を下した。彼女の遺体は日陰にある黒ずんだ木の納屋に入れられた。
亜紗子さんは座り込んで息を荒げ泣いていた。僕は再度近寄ってきた蠅を払い、亜紗子さんに近づいた。
「大丈夫・・・?じゃないよね・・・」
「あ、うん。ちょっと落ち着いてきたかも・・・」
「それならよかった。なんというか・・・、そういう知人の死って悲しいからさ」
僕は眸のことを思い出していた。実際に眸の死の現場に直面したわけではないが、偽の眸・・・目玉しゃぶりに出会ったことで、僕は旧友の死を知る羽目になってしまった。知らぬが仏の言葉ではないが、やはりそれは受け入れがたき事実であった。
だが、それは受け入れなくてはならないこと。その事実を知った時は、頭を木槌で殴られたような衝撃が走ったのを忘れない。殴られて、脳の中に靄がかかったあの状態。
それを亜紗子さんも感じているに違いない。
「神門さんもそういった経験が?」
「あー、うん。まあ・・・二十一年も生きていればそういうこともあるさ」
僕は作り笑いを浮かべた。しかし、眸のことを思い出してしまい、まるで胸が麻縄で締め付けられる痛みを感じた。
「神門さんって、二十一歳なんですか?」
「うん、そうだよ」
「ご、ごめんなさい・・・。私、てっきり・・・未成年だと・・・」
「み、未成年・・・?!」
「だ、だから昨晩の宴の際にもお酒を出すべきか悩んで・・・。実は昨晩の宴では、雪華さんと源一さんだけ日本酒を出していたんです。やはり、出してよかったんですね。これからお出しします」
「あ、いや・・・うん」
自分が下戸であることを告げることができなかった。
一口飲んだら意識が飛んでしまうのだが・・・、まあ、その時なんとかするか・・・。
「では、私はこれで。美藤様の食事の支度を・・・」
「あ、そうだね。いってらっしゃい」
亜紗子さんは僕に一礼すると、美藤さんの家へと駆けて行った。
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「あー・・・・・・死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ねええええぇぇぇ・・・!」
爪の長い女はその長い爪を噛んだ。
「皆、死ね。死んじゃえばいいのに。それじゃあおいしく、いただきます」
その爪は人間の首にささった。
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「山姥だ!山姥の仕業だぞ!!」
その声が聞こえてきたのは朝だった。外は騒がしく、人が大勢集まっているようだった。
(山姥・・・?)
雪華もその声に気づいたらしく、すぐに家を飛び出した。
すると、村の端に人だかり。
その人垣を分け入ると、誰か倒れていた。
死んでいたのは美藤さんの侍女の一人だった。
「恵津子!恵津子!!!」
その死体を揺らすのは亜紗子。手を血まみれにして涙をボロボロと流していた。
「恵津子・・・なんでこんな・・・ッ!!」
「亜紗子さん、これは一体・・・・・・?」
「山姥よ!!」
泣きながら亜紗子さんは言った。
「今朝、給仕をしようと思って・・・でも、私と彼女は一緒に料理をする担当になっていて・・・。でも、時間になっても見つからなくて・・・・・・そしたら、そしたらッ・・・!!!!」
血まみれの侍女の体には数匹の蠅が音を慣らし飛び回っていた。その光景を見て、強烈に襲いくる吐き気を抑えた。死体を見ながら僕は、僕に止まった一匹の蠅を払いのけながら亜紗子さんに近づいた。
「あの、亜紗子さん・・・。落ち着いて・・・」
「これが落ち着いていられる?!仲間が山姥に殺されて!!」
亜紗子さんは猛犬の如く噛みつかんとばかりに僕に詰め寄った。
「・・・ごめんなさい」
我に返ったように亜紗子は下を向いた。
「あなたに怒ってもしょうがないわ。ごめんなさい」
亜紗子さんは座りこんで血まみれの手で頭を抱えた。
「・・・とにかく、彼女の遺体をここに置いておけない。別の場所に移そうか」
僕は自分でも驚くくらい冷静な判断を下した。彼女の遺体は日陰にある黒ずんだ木の納屋に入れられた。
亜紗子さんは座り込んで息を荒げ泣いていた。僕は再度近寄ってきた蠅を払い、亜紗子さんに近づいた。
「大丈夫・・・?じゃないよね・・・」
「あ、うん。ちょっと落ち着いてきたかも・・・」
「それならよかった。なんというか・・・、そういう知人の死って悲しいからさ」
僕は眸のことを思い出していた。実際に眸の死の現場に直面したわけではないが、偽の眸・・・目玉しゃぶりに出会ったことで、僕は旧友の死を知る羽目になってしまった。知らぬが仏の言葉ではないが、やはりそれは受け入れがたき事実であった。
だが、それは受け入れなくてはならないこと。その事実を知った時は、頭を木槌で殴られたような衝撃が走ったのを忘れない。殴られて、脳の中に靄がかかったあの状態。
それを亜紗子さんも感じているに違いない。
「神門さんもそういった経験が?」
「あー、うん。まあ・・・二十一年も生きていればそういうこともあるさ」
僕は作り笑いを浮かべた。しかし、眸のことを思い出してしまい、まるで胸が麻縄で締め付けられる痛みを感じた。
「神門さんって、二十一歳なんですか?」
「うん、そうだよ」
「ご、ごめんなさい・・・。私、てっきり・・・未成年だと・・・」
「み、未成年・・・?!」
「だ、だから昨晩の宴の際にもお酒を出すべきか悩んで・・・。実は昨晩の宴では、雪華さんと源一さんだけ日本酒を出していたんです。やはり、出してよかったんですね。これからお出しします」
「あ、いや・・・うん」
自分が下戸であることを告げることができなかった。
一口飲んだら意識が飛んでしまうのだが・・・、まあ、その時なんとかするか・・・。
「では、私はこれで。美藤様の食事の支度を・・・」
「あ、そうだね。いってらっしゃい」
亜紗子さんは僕に一礼すると、美藤さんの家へと駆けて行った。